ChatGPTやGeminiなどの生成AIを、仕事で使う機会が増えています。 メールの文章を考えてもらったり、長い資料を要約したり、Excelの使い方を質問したり、パソコンのトラブルについて相談したりと、使い方次第では仕事を大きく効率化できます。
一方で、便利だからといって、会社の資料や顧客情報をそのまま生成AIへ入力してよいわけではありません。
特に、専任のIT担当者がいない中小企業では、会社として生成AIの使い方を決めないまま、社員それぞれがChatGPTやGeminiを使い始めているケースもあります。
ただし、これは「生成AIは危険だから仕事では使わない方がよい」という話ではありません。
大切なのは、生成AIを使うか使わないかではなく、「AIに何を渡してよいか」を判断できるようにすることです。
この記事では、中小企業がChatGPTやGeminiなどを仕事で利用するときに、そのまま入力しない方がよい8つの情報と、情報を削除・置換・匿名化しながら生成AIを活用する方法を紹介します。
生成AIに会社の情報を入力する前に知っておきたいこと
生成AIだからすべて危険というわけではない
「生成AIへ会社の情報を入力すると、すべてインターネット上へ公開されてしまう」と考える必要はありません。
一方で、「生成AIならどのサービスへ何を入力しても問題ない」と考えるのも適切ではありません。
生成AIサービスでは、利用しているサービス、契約しているプラン、管理者による設定などによって、入力したデータの取り扱いが異なります。
そのため、会社で生成AIを使う場合は、まず「どのサービスを、どの契約・設定で利用しているのか」を把握しておくことが大切です。
個人向けと法人向けでは情報の扱いが異なる
例えばChatGPTでも、個人向けサービスと企業向けのサービスでは、データの取り扱いに違いがあります。 GoogleのGeminiについても、個人向けサービスとGoogle Workspaceなどの組織向け環境では条件が異なります。
つまり、「ChatGPTだから安全」「Geminiだから危険」というように、サービス名だけで判断することはできません。
反対に、法人向けサービスを契約しているからといって、パスワードや取引先から預かった機密情報まで自由に入力してよいという意味でもありません。
会社の契約内容、社内ルール、取引先との契約なども含めて判断する必要があります。
必要なのは「AIに何を渡す必要があるか」を考えること
生成AIへ相談するときに、元の情報をすべて入力する必要があるとは限りません。
例えば、Microsoft 365へサインインできない問題についてChatGPTへ相談するとします。
入力する必要がない情報
「ログインIDは○○で、パスワードは○○です。サインインできません。」
この場合、パスワードまでAIへ伝える必要はありません。
必要な情報だけにする
「Microsoft 365へサインインすると、○○というエラーが表示されます。考えられる原因を教えてください。」
これだけでも、多くの場合は問題の切り分けを始めることができます。
生成AIを仕事で安全に使うポイントは、問題を解決するために必要な情報と、AIへ渡す必要のない情報を分けることです。
生成AIに入力してはいけない8つの情報
1.パスワード・認証情報
最も分かりやすいのが、パスワードや認証情報です。
例えば、次のような情報は原則として入力しないようにします。
- パスワード
- 確認コード
- ワンタイムパスワード
- APIキー
- 秘密鍵
- バックアップコード
- アカウント復旧用コード
パソコンやクラウドサービスのトラブルを生成AIへ相談するときも、通常はパスワードそのものを伝える必要はありません。
「どのサービスで」「何をすると」「どのようなエラーになるのか」を伝えれば、問題を切り分けられるケースは多くあります。
2.顧客の個人情報
顧客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日なども、その情報が本当に必要なのかを確認してから入力します。
例えば、顧客への返信メールを生成AIに考えてもらう場合でも、
変更前
株式会社○○ 山田太郎様
yamada@example.com
090-xxxx-xxxx
変更後
A社 担当者様
のように置き換えても、メール文章を考えてもらうという目的にはほとんど影響しない場合があります。
生成AIの回答に必要のない個人情報は、最初から渡さないことが基本です。
3.従業員の個人情報・人事情報
社員に関する情報も慎重に扱う必要があります。
例えば、次のような情報です。
- 給与
- 人事評価
- 履歴書
- 勤怠情報
- 採用情報
- 健康に関する情報
- 社内トラブルの内容
- 労務関係の相談内容
例えば、人事上の問題について生成AIに整理してもらいたい場合でも、実名を使わず、
「営業部の従業員A」「管理職B」
などへ置き換えられることがあります。
誰の情報なのかを特定できなくても相談できるのであれば、特定につながる情報は削除してから利用した方が安全です。
4.社外秘・未公開の経営情報
生成AIは、企画書の整理やアイデア出しにも便利ですが、会社の未公開情報をすべて入力する必要があるとは限りません。
例えば、次のような情報です。
- 新商品や新サービスの内容
- 原価
- 価格戦略
- 営業計画
- 経営計画
- 顧客リスト
- M&Aに関する情報
- まだ公開していない案件
企画について相談したいのであれば、資料全体をそのままアップロードするのではなく、AIに検討してほしい部分だけを抜き出す方法があります。
「資料全部を渡さなければAIは使えない」と考えないことが大切です。
5.取引先から預かっている情報
自社の情報以上に注意したいのが、取引先や顧客から預かっている情報です。
例えば、
- 顧客から預かった資料
- 設計図面
- 顧客名簿
- システム仕様書
- 業務データ
- 秘密保持契約の対象となっている資料
などがあります。
自社で作成した情報であれば自社で利用方法を判断できる場合がありますが、取引先から預かっている情報については、自社だけの判断で外部サービスへ入力してよいとは限りません。
生成AIへ入力する前に、契約内容や社内ルールを確認する必要があります。
6.契約書・見積書・請求書・会計資料
契約書や見積書などは、生成AIとの相性がよい資料でもあります。
長い契約書を整理したり、文章を分かりやすくしたり、見積内容を確認したりする用途では、生成AIが役立つことがあります。
だからといって、原本をそのまま入力しなければならないわけではありません。
例えば、
- 会社名
- 担当者名
- 住所
- 銀行口座
- 取引先名
- 正確な取引金額
などが、今回の相談に本当に必要なのかを確認します。
必要がなければ、削除したり別の名称へ置き換えたりしてからAIへ渡します。
7.攻撃に悪用され得るシステム・セキュリティ情報
ITトラブルの相談では、ネットワークやサーバーの情報を生成AIへ伝えることがあります。
ここで重要なのは、トラブル解決に必要な技術情報と、第三者に渡すべきではない認証情報を分けることです。
例えば、次のような情報は入力しないようにします。
- 管理者パスワード
- VPNの認証情報
- APIキー
- 秘密鍵
- リモート接続用の認証情報
- セキュリティ製品の認証情報
一方で、ネットワーク障害について、
PC:192.168.1.x
サーバー:192.168.1.x
インターネットには接続できる
共有フォルダだけ開けない
といった情報を伝えることで、原因を切り分けられることもあります。
ITに関する情報をすべて隠してしまうと、生成AIをトラブル解決に活用できなくなります。
大切なのは、「この情報は問題解決に必要なのか」「認証や侵入に悪用される情報ではないか」を分けて考えることです。
8.外部へ出たら困る情報
ここまで7種類を紹介しましたが、すべての会社情報を分類してルールを作るのは簡単ではありません。
そこで、迷ったときに使える簡単な判断基準があります。
「この情報を社外の人にそのまま見られても困らないか?」
困るのであれば、そのまま生成AIへ入力せず、
- 削除する
- 別の名前へ置き換える
- 匿名化する
- 必要な部分だけ要約する
といった加工をしてから使います。
これは「生成AIへ入力した内容がそのまま外部へ公開される」という意味ではありません。
入力するか迷ったときの、社内で使いやすい判断基準として考えてください。
では、仕事で生成AIを使うにはどうすればいい?
生成AIへ入力してはいけない情報を知ると、「仕事では何も入力できないのでは」と感じるかもしれません。
しかし実際には、情報を少し加工するだけで生成AIを利用できる仕事はたくさんあります。
会社名や氏名を置き換える
「株式会社○○の山田さん」を、
「A社の担当者」
へ置き換えます。
相談内容に会社名や実名が必要なければ、これだけで個人や会社を特定しにくくできます。
メールアドレスや電話番号を削除する
メール本文をAIに整理してもらう場合、署名欄まで必要なことはほとんどありません。
氏名、電話番号、メールアドレス、住所などを削除し、相談したい本文だけを使います。
資料全部ではなく必要な部分だけ使う
10ページの資料について相談したいからといって、10ページすべてを入力する必要があるとは限りません。
確認してほしい文章や表だけを抜き出せば、目的を達成できる場合があります。
正確な数値が不要なら概算へ置き換える
例えば、経営上の相談をするときに、
「12,843,592円」
という正確な金額が必要でなければ、
「約1,300万円」
のように置き換える方法があります。
必要な精度に合わせて情報を減らすことも、生成AIを安全に使う方法の一つです。
システム情報も必要最低限にする
パソコンのトラブルについて相談するときも、実際のサーバー名や管理者名などをすべて伝える必要がない場合があります。
「Windows 11のパソコン」「社内サーバー」「共有フォルダ」「有線LAN」
といった情報だけで、最初の切り分けができることもあります。
「そのまま入力」から「AI用に情報を加工する」へ
生成AIを安全に活用するためには、会社で扱っている情報をそのままコピーして入力するのではなく、AIへ渡すために一度情報を整理する習慣を作ることが有効です。
そのまま入力する例
株式会社○○の山田太郎さんから、○月○日に新しいシステムについて問い合わせがありました。 連絡先は○○で、現在の契約金額は○○円です。 返信メールを作ってください。
情報を加工した例
既存顧客の担当者から、新しいシステムについて問い合わせがありました。 詳しい説明を希望されています。 丁寧な返信メールを作ってください。
返信文章を作ることが目的であれば、会社名、氏名、連絡先、契約金額などが必要ない場合があります。
このように、生成AIの回答に必要な情報だけを残すことがポイントです。
中小企業では生成AIを禁止するより利用ルールを決める
生成AIによる情報漏えいを心配して、会社でChatGPTやGeminiの利用をすべて禁止する方法もあります。
しかし、社員が生成AIを使う機会は今後さらに増えていくと考えられます。
特にIT担当者がいない中小企業では、最初から何十ページもの細かなAI利用規程を作るより、まず簡単なルールから始める方が運用しやすいでしょう。
例えば、最初は次の4点だけでも決めておきます。
- 生成AIへ入力してはいけない情報
- 会社名や個人名などを匿名化する方法
- 会社で使用してよい生成AIサービス
- 判断に迷ったときの相談先
「何でも禁止する」のではなく、「この範囲なら使ってよい」を明確にした方が、社員も安心して生成AIを仕事に活用できます。
生成AIへ入力する前の5秒チェック
ChatGPTやGeminiへ会社の情報を入力する前に、次の5項目だけ確認してみてください。
- □ パスワードや認証情報が入っていないか
- □ 氏名・住所・電話番号などが入っていないか
- □ 顧客や取引先から預かった情報ではないか
- □ 社外秘・未公開情報ではないか
- □ 社外へそのまま出ても問題ない内容か
1つでも気になる項目があれば、その情報が本当にAIの回答に必要なのかを確認します。
必要がなければ、削除・置換・匿名化してから入力します。
生成AIは「何を入力するか」を決めれば仕事で活用できる
生成AIを安全に使うために必要なのは、「会社の情報を何も入力しないこと」ではありません。
AIに何を渡す必要があり、何を渡す必要がないのかを判断することです。
会社名や氏名、メールアドレス、パスワードなどを取り除いても、生成AIに相談できる仕事はたくさんあります。
中小企業では生成AIを全面禁止するよりも、「入力してはいけない情報」と「情報をどう加工するか」を決めておく方が、実際の業務では使いやすいでしょう。
また、会社で利用する生成AIについては、サービス名だけで判断するのではなく、契約しているプランやデータの取り扱い、管理設定なども確認しておくことが大切です。
生成AIを仕事で使いたいけれど、どこまで利用してよいか分からない場合は
「ChatGPTを仕事で使いたいけれど、社内ルールをどう決めればよいか分からない」
「社員がそれぞれ生成AIを使い始めていて少し心配」
「自社ではChatGPTとGeminiのどちらを使えばよいのか分からない」
株式会社ITAでは、パソコンやネットワークだけでなく、中小企業の生成AI・IT活用についても一緒に考えています。
生成AIを禁止するのではなく、自社の業務に合わせて安全に使える状態を作ることが大切です。
生成AIの情報管理や利用ルールでお困りの場合は、ご相談ください
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株式会社ITAでは、八王子市を中心とした中小企業向けに、生成AIの使い方や情報の扱い方、無理なく続けられる社内ルールづくりについてご相談を承っています。IT担当者がいない場合でも、まずは現在の利用状況やお困りごとをお聞かせください。
