
近年、ウイルス感染、迷惑メール、なりすましメール、不正アクセス、情報漏えいなど、 企業を狙ったセキュリティ上のトラブルは大企業だけの問題ではなくなっています。
特に中小企業では、専任のIT担当者がいない、パソコンやネットワークの管理が担当者任せになっている、 セキュリティ対策をどこから始めればよいかわからない、というケースも少なくありません。
そこで確認に役立つのが、現在のセキュリティ対策状況を見直す 「情報セキュリティ自社診断」です。
この記事のポイント
- 中小企業でも情報セキュリティ対策は必要
- 自社診断を行うことで、現在の弱点を把握できる
- まずは基本対策から少しずつ改善していくことが大切
情報セキュリティ自社診断とは
情報セキュリティ自社診断とは、自社のパソコン、ネットワーク、メール、パスワード管理、 データ保管、バックアップ、社内ルールなどについて、現在どの程度対策できているかを確認する取り組みです。
たとえば、次のような項目を確認します。
- パソコンやスマートフォンのOS・ソフトウェアを最新の状態にしているか
- ウイルス対策ソフトを導入し、定義ファイルを最新にしているか
- 推測されにくいパスワードを使用しているか
- 重要なデータへのアクセス制限を行っているか
- メールの添付ファイルやURLを不用意に開かないよう注意しているか
- 重要データのバックアップを取っているか
- 退職者や異動者のアカウント管理を適切に行っているか
難しい専門用語を使って高度な診断を行うというよりも、 「自社の基本的なセキュリティ対策に抜け漏れがないかを確認する」 ためのチェックと考えると理解しやすいです。
なぜ中小企業にも自社診断が必要なのか
「うちは小さな会社だから狙われない」と考えてしまう方もいますが、 実際には中小企業もサイバー攻撃や情報漏えいのリスクと無関係ではありません。
攻撃者は、会社の規模に関係なく、セキュリティ対策が弱いところを狙います。 また、取引先とのメール、請求書、顧客情報、従業員情報、業務データなど、 中小企業にも守るべき重要な情報は多く存在します。
情報セキュリティ自社診断を行うことで、次のようなメリットがあります。
- 自社のセキュリティ対策の現状を把握できる
- どこに弱点があるのかを見つけやすくなる
- 優先して改善すべき項目がわかる
- 社内でセキュリティ意識を共有しやすくなる
- 取引先からの信頼維持にもつながる
セキュリティ対策は、いきなり高額なシステムを導入すればよいというものではありません。 まずは現在の状態を確認し、できていない部分をひとつずつ改善していくことが大切です。
IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」
情報セキュリティ自社診断を始める際に参考になるのが、 IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公開している 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」 です。
これは、中小企業が自社の情報セキュリティ対策の状況を確認するための診断ツールです。 診断項目に回答することで、現在の対策レベルや問題点を把握しやすくなります。
IPAの自社診断は、専門知識がない方でも取り組みやすく、「何から確認すればよいかわからない」という中小企業にとって、 セキュリティ対策の第一歩として活用しやすい内容です。
自社診断で確認したい主なポイント
1. パソコンやソフトウェアを最新の状態にしているか
Windows Updateやソフトウェアの更新を長期間放置していると、 既知の脆弱性を悪用される危険性があります。
業務で使用しているパソコン、ブラウザ、PDF閲覧ソフト、Office製品、 業務ソフトなどが最新の状態になっているかを確認しておきましょう。
2. ウイルス対策ソフトが正しく動作しているか
ウイルス対策ソフトを入れていても、期限切れになっていたり、 定義ファイルが古いままだったりすると十分な効果を発揮できません。
すべての業務用パソコンでセキュリティソフトが有効になっているか、 更新が正常に行われているかを確認しておくことが大切です。
3. パスワード管理が適切か
短いパスワード、使い回しのパスワード、会社名や電話番号などから推測されやすいパスワードは避けたいところです。
メール、クラウドサービス、業務システム、ルーター、NAS、WordPressなど、 重要なアカウントでは強固なパスワードを設定し、可能であれば多要素認証も検討しておくと安心です。
4. 重要データのバックアップを取っているか
パソコンの故障、誤削除、ランサムウェア感染、NASの障害などにより、 業務データを失ってしまうことがあります。
バックアップは「取っているつもり」ではなく、 実際に復元できるかまで確認しておくことが大切です。
5. メールや添付ファイルの取り扱いに注意しているか
最近は、実在する会社やサービスを装ったなりすましメールも増えています。 請求書、配送通知、セキュリティ警告、アカウント停止通知などを装い、 添付ファイルや偽サイトへ誘導する手口があります。
不審なメールを開かない、添付ファイルを安易に実行しない、 URLのリンク先を確認する、といった基本的な習慣が大切です。
6. 社内ルールが明確になっているか
セキュリティ対策は、機器やソフトだけで完結するものではありません。 誰がパソコンを管理するのか、退職者のアカウントをいつ削除するのか、 USBメモリを使用してよいのか、重要データをどこに保存するのかなど、 社内ルールの整備も必要です。
特に小規模な会社では、ルールが明文化されておらず、 その場その場の判断になっていることがあります。 自社診断をきっかけに、最低限のルールを整理しておくと安心です。
診断結果は「点数」よりも改善につなげることが大切
情報セキュリティ自社診断を行うと、対策できている項目と、 まだ不十分な項目が見えてきます。
ここで大切なのは、点数の良し悪しだけで終わらせないことです。
診断結果をもとに、
- すぐに改善できること
- 費用をかけずに見直せること
- 専門家に相談した方がよいこと
- 今後計画的に対応すべきこと
に分けて、優先順位をつけていきましょう。
たとえば、パスワードの見直し、Windows Updateの確認、 ウイルス対策ソフトの状態確認、バックアップ先の確認などは、 比較的早い段階で取り組みやすい項目です。
IT担当者がいない会社こそ、定期的な見直しが必要です
中小企業では、経理担当者や総務担当者がパソコン管理を兼任していることも多くあります。 ただ、日々の業務に追われる中で、セキュリティ対策の確認まで手が回らないケースも少なくありません。
また、パソコンやネットワーク環境は一度整えれば終わりではありません。 Windowsの更新、ソフトウェアの変更、クラウドサービスの利用、従業員の入退社、 取引先とのデータ共有などにより、必要な対策も変わっていきます。
そのため、情報セキュリティ自社診断は一度だけではなく、 半年に一度、または年に一度など、定期的に実施しておくと安心です。
まとめ:自社診断はセキュリティ対策の第一歩
情報セキュリティ対策というと、専門的で難しいものに感じるかもしれません。 ただ、最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは自社の現状を確認し、 できていること、できていないことを把握することが第一歩です。
中小企業にとって、情報セキュリティ自社診断は、 限られた人員や予算の中でも始めやすい現実的な対策です。
「自社のパソコン管理やセキュリティ対策に不安がある」 「何から確認すればよいかわからない」 「社内にIT担当者がいない」 という場合は、早めに現在のIT環境を見直しておくと安心です。


